歯周病と全身疾患(歯周医学)
歯周病と全身疾患(糖尿病をはじめとする生活習慣病)
歯周病と全身疾患について
1960年代になり歯周病の原因がプラークであることが証明され、1990年代にはそれらの研究を踏まえ、歯周病と全身の健康状態が密接に関連し合っている事を示唆するエビデンスが蓄積されはじめ、歯周病と全身疾患との相互関係の解明を目的とした歯周医学が発展してきています。
ここでは、最近よくトピックスとして取り上げられる歯周病といくつかの疾患の関連性を書いてみたいと思います。
名古屋市の検診
名古屋市では歯周疾患でお困りの方が多い事から検診を行うようになっています。糖尿病などの疾患が一般的になりつつある中で、まだ歯周病の怖さが一般的にはなっていないような気がしています。
ごきそ歯科があります昭和区でもまだまだ情報が足りていないのか歯周病に関して正しい情報をお持ちでない方が多いようです。
このカテゴリーでは発信源としては小さいですが、歯科医院レベルで歯周病と全身疾患の様々な情報を発信していきたいと考えています。
歯周病と糖尿病
糖尿病の合併症としての歯周病
近年、糖尿病の合併症としての歯周病の病態が明らかになってきています。
従来、高血糖が
1.口渇を引き起こし口腔の自浄作用を低下させ
2.歯周病原菌の繁殖をさせやすくする
3.白血球の機能低下を招く
4.組織の修復力を低下させる
などが糖尿病患者における歯周病の重症化の原因とされてきました。
しかし、そんな中で近年では、歯周病は糖尿病単独の合併症だけではなく、糖尿病や、肥満などが密接に関係したメタボリックシンドロームの合併症としてとらえられる傾向になってきています。
歯周病がリスク要因に
歯周病を治療すると実際に血糖値が下がっているケースもあるようです。もちろん、歯周病を治療すると確実に糖尿病が治るというデータがあるわけではありません。しかし、歯周病がそれら疾患のリスク要因になっていることは間違いないと思われます。
歯周病を予防、治療すること
メタボリックシンドロームや糖尿病を進行させないためにも歯周病を予防、治療することはとても意義のあることです。
ギネスブックによると最も多い伝染病は『風邪』だそうです。一方で、最も多い病気は『歯周病』だそうです。
『全世界で最も患者が多い病気は歯周炎などの歯周病である。地球上を見渡しても、この病気に冒されていない人間は数えるほどしかいない』
とも言われています。
名古屋市では160万人以上
このデータからすると、名古屋市の人口は平成22年の段階で225万人。ごきそ歯科のある昭和区は10万人。人口の約7~8割が歯肉炎、歯周病に感染しているので、簡単に見積もっても、名古屋市では160万人以上、昭和区では7万人以上が歯周病、歯肉炎になっていると考えられる。
歯周病に関しての認識を再度改める時期が来ているのかもしれませんね。
歯周病と早産・低体重児出産
歯周病と早産・低体重児出産の関係
近年、歯周病と全身疾患との関係が報告される中で、歯周病と早産・低体重児出産の関係も報告されるようになってきています。
分娩を引き起こす物質は炎症性物質であることが分かっていて、歯周病も細菌に感染し口腔内局所で炎症が起こる病気であり、口腔内局所で産生された炎症性物質が直接または間接的に産科器官に作用して早産が発生するのではと考えられています。
ではその理論にどの程度の信憑性があるのでしょうか?
さまざまな研究が行われているが、関連性があると結論付けられたものが多い一方で、関係がないと発表されているものも多いのが事実です。
歯周病と早産・低体重児出産が関係していると言われるようになった背景に、元来、早産・低体重児出産などのリスクとして考えられてきた喫煙、アルコール、ドラッグ、人種、早産の既往などを持たない妊婦さんにも早産や低体重児出産が存在することから、新たなリスクとして歯周病が注目されるようになってきたのです。
厚生労働省の歯科疾患実態調査結果
厚生労働省の平成17年度歯科疾患実態調査結果によると、妊娠可能年齢の女性の7~8割が歯周病であり、その内、10~20%は重度の歯周病に罹患していると言われている。
実際に歯周病のコントロールが出来ていない妊婦さんは、早産や低体重児出産が多かったというデータもあります。
歯周病との関連性を確かにするデータはまだ出ていないが、さまざまな研究から早産・低体重児出産のリスクの1つであることは間違いないと思います。
妊婦さんの口腔内についての意識の向上
また、口腔内環境の全身に対する影響に関する情報を広めておくことは、妊婦さんの口腔内についての意識の向上や口腔内状況の改善につながると思われ、さらには出産に良い効果を及ぼす可能性もあるかもしれません。妊娠期をきっかけに、妊婦さん自身の歯周病予防だけでなく全身の健康維持にも役立つと考えられます。
昭和区は名古屋市の中でも人口が少ない地域なのですが、御器所に限って言えばここ最近本当に若いヒトを中心に人口が増えてきていると思われます。若い妊婦さんやお母さんにお口に関する正しい情報を発信できたらと考えています。
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歯周病が糖尿病・メタボリックシンドローム・骨粗鬆症などと関係していることが明らかになってきた。
糖尿病・メタボリックシンドローム・骨粗鬆症
生活習慣病の1つである歯周病とさまざまな全身疾患に関係があることが近年の研究結果から明らかになってきています。
医学の父ギリシャの医師ヒポクラテスは、細菌の存在が知られていなかった時代から、お口の病気を無くせば全身の健康が回復すると言うことを説き、歯石を除去する道具を開発していたそうです。
成人の80%が歯周病に罹患
現在成人の80%が歯周病に罹患していると言われ、さらに60歳になると、そのおよそ40%が重度の歯周病に罹患していると言われています。
中高年では珍しくない病気になってきたが、時と場合によっては放置しておくと致命的になることもあります。
その理由として歯周病が糖尿病、骨粗鬆症、冠状動脈疾患(心筋梗塞、狭心症など)、脳血管障害(脳梗塞、くも膜下出血、脳出血など)、癌やメタボリックシンドロームと密接な関係にあることが近年の研究結果からわかってきたからです。
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歯周病と骨粗鬆症・骨密度
骨折リスクが高くなる骨の疾患
2000年のアメリカ国立公衆衛生研究所(National Institute of Health:NIH)の会議で「骨粗鬆症は、骨の強度(骨密度と骨質)の低下によって骨折リスクが高くなる骨の疾患」と定義している。
歯周病と骨粗鬆症の関係
そもそも、なぜ歯周病と骨粗鬆症の関係が注目されるようになってきたのでしょうか?
骨粗鬆症と歯の喪失の原因でもある歯周病との関連性の研究は、1960年代後半より骨粗鬆症による全身の骨量減少と歯周病による口腔内局所の歯槽骨の吸収に共通点があるのではないか?という疑問から始まりました。
現段階では2つの疾患の関連性を決定づけるエビデンスはありませんが、実際、さまざまな論文で関連性があると結論付けているものもあります。一方で全く関係無いと結論付けているものも多くあるのが現状です。
女性ホルモンのエストロゲン分泌の低下
ただ、閉経後骨粗鬆症は、閉経による卵巣機能低下によって女性ホルモンのエストロゲン分泌が低下することによって起こり、このエストロゲン低下が骨代謝に大きく関与し、結果として歯周病の進行にも影響を及ぼすことも分かってきています。
骨代謝が大きく関与している病気
歯周病も骨粗鬆症も骨代謝が大きく関与している病気です。歯周病を治せば骨粗鬆症が治るわけではありませんが、少しでもそのリスクを下げるためにも歯周病のケアを大切にしていただきたいと考えています。
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歯周病の薬物療法(予防)
歯周病の治療も多様化
一般的に、歯周病はお薬を飲んで治す治療ではありませんが、近年、歯周病の治療も多様化してきて、プラークコントロールや歯石の除去だけではなく、特殊な抗生剤を利用したり、サプリメントを利用して予防、治療をすることが増えてきています。
どの程度の効果があるのでしょうか?
歯周病の薬物療法は実際さまざまな医院や研究機関で実践されており、効果も出てきているようです。
実際に抗生物質を利用した治療の研究論文は結構あります。
私は歯周病治療に抗生物質を積極的には使っていませんが(急性期は除く)、スウェーデンのバイオベンチャー企業が研究開発している歯周病、カリエス(虫歯)を予防するためのサプリメントの勉強し使いはじめています。
ただ、あくまでも補助的な意味合いで使っているので、歯周病の根本的な治療であるプラークコントロールと歯石の除去がなくなることはありません。
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歯周病と動脈硬化
歯周病が動脈硬化症を悪化させるメカニズム
歯周病が動脈硬化症を悪化させるメカニズムを、新潟大学大学院医歯学総合研究科の山崎和久教授(歯周病学)らのグループが解明し、歯周病原菌が悪玉コレステロールを回収する善玉コレステロールを減らす機能がある事が分かったそうです。
近々、アメリカの科学誌に掲載されます。
歯周病と生活習慣病
歯周病とさまざまな生活習慣病との関係が分かってきています。歯周病治療をする事によって、それら生活習慣病のリスク要因を少しでも減らす努力が必要ですね。
歯周病と肝機能
歯周病と肝機能に関しての記事をごきそ歯科の歯周病治療専門サイトにアップいたしました。
これからの時代、歯周病の治療、口腔ケア無くして、長生きに関しては語れません(^v^)
ぜひご覧ください!
ビスホスホネート(BP)系薬剤を服用中の患者さんへのお知らせ
治療前にお知らせください
骨粗鬆症や悪性腫瘍の治療薬としてビスホスホネート系の薬剤が頻繁に使われるようになっています。
ビスホスホネート系の薬剤を服用中の方は必ず治療前にお知らせください。
副作用があります
とても効果のある薬剤である一方で、副作用があります。
歯科領域で注意したい点は、顎骨に対する侵襲的な治療(抜歯、インプラント、歯周外科など)後に顎骨壊死を起こす可能性があると言う事です。
一般的に経口薬は注射剤に比べてリスクが低いと言われているので、むやみに歯科治療を避けたり、薬剤服用を中止する必要はありません。
リスクとベネフィットを十分に検討し、場合によってはかかりつけの先生に相談したりして、歯科治療を行うかどうかを判断します。
顎骨壊死のリスクを軽減させるためにはどうしたら良いのでしょうか?
まず、ビスホスホネート系薬剤を服用予定である方は、抜歯などの顎骨への侵襲を伴う治療は服用前に済ませておく事をお勧めします。
すでに服用中の患者さんで注射剤を投与されている場合は薬剤の種類と投与期間にもよりますが、外科処置は極力避けます。経口薬の場合は薬の種類と期間にもよりますが、主治医との相談が必要です。
抗血栓薬を服用中の外科処置に関して
抗血栓薬を服用中の方へ
生活習慣病の増加に伴って抗血栓薬(血をサラサラにするお薬)を服用中の方が増えています。抗血栓薬療法は効果が大きい一方で、出血した場合に止血が難しくなるなどの副作用があります。
内科の先生と連携
歯科治療は歯周治療や抜歯など出血を伴う治療が多くあります。抗血栓療法を受けている方は受診する際に必ずその旨をお知らせください。
心筋梗塞や脳梗塞の既往がある場合は、発作が起こった時期もお知らせください。発作の時期が最近である場合や、発作の程度によっては外科処置が出来ない場合があります。
また、お薬を処方している内科の先生と相談し、場合によってはお薬の服用を止めて治療を進める場合があります。
抗血栓療薬を服用中の外科処置に関して②
外科処置が行えるかどうかの判断基準
抗血栓薬を服用中の外科処置で、服用中のお薬を止めて処置をするか止めないかでは意見が分かれるところです。ごきそ歯科医院での外科処置が行えるかどうかの判断基準としては
1.発作の時期
心筋梗塞や脳梗塞などの発作から6カ月以上たっている場合は特に問題なく処置が出来ます。また、その際、服用中のお薬を止めない事がほとんどです。
2.病気の程度
仮に発作から6か月以上経過していても、病気の程度が思わしくない場合は処置を行わない事があります。緊急時で、どうしても処置が必要な場合はかかりつけの内科医に相談するか、口腔外科をご紹介させていただいています。
過去に心筋梗塞や脳梗塞の既往があり、抗血栓薬を服用中の方は必ずその旨をお知らせください。